せっつの農業を盛り上げたい

更新日:2026年02月01日

鳥飼八町にある株式会社アグリズム摂津の渡邉勝彦代表取締役に、農業に関する話や地産地消への思いを語っていただきました。

渡邉 勝彦さん

昭和31年摂津市生まれ摂津市育ち。両親は農業を営んでおり、幼い頃から農業に触れて育つ。大手ハウスメーカーの内定を辞退して昭和54年摂津市役所に技術職(土木職)として入庁。市役所では上下水道事業などに尽力。平成28年に退職。令和5年から農業委員会会長を務める。令和5年、株式会社アグリズム摂津を設立。農業を次世代につなげる活動などを続けている。

 

せっつの農業を盛り上げたい

ー鳥飼八町で長く農業に携われてきましたが、令和5年3月に「株式会社アグリズム摂津」を設立されましたね。まず、法人化を決断されたきっかけやその背景について教えてください。


摂津の農業を次の世代へつなげていきたいと思い、法人化を決断しました。私は鳥飼八町で生まれ育ち、幼い頃から農業に親しんできました。また、市役所勤務の経験が長いこともあり、市が抱える課題について多少理解しています。今は農業委員会会長という立場もあり、ここで地域のためにがんばる使命があると感じています。

地元に貢献し、摂津の特産品を活用して地域を盛り上げたいという思いがあります。『鳥飼なすワングランプリ』というイベントでは、市内の飲食店へ鳥飼なすを提供しています。これは、飲食店が鳥飼なすを使ったメニューを提供し、食べた人が投票して、一番人気のメニューがグランプリになるというイベントです。このイベントのように仲間とともに、現在進行形でさまざまなアイデアや取り組みを模索しています。

収穫作業に向かう人たち
植物オブジェ
飼い猫の「ミーコ」

農業の現実を伝えていく

ー現在どのような農作物を手がけていらっしゃいますか。


米を1万5千平方メートル、鳥飼なすを500平方メートル、四季折々の野菜を500平方メートルほど育てています。他にも、JA北大阪からの受託業務で耕うん、田植えなどをしています。

農業を学びたい人の受け入れも積極的に行っています。例えば、「SFC※」の卒業生は年間2〜3人ほど受け入れています。また、大阪府農政室からも依頼を受け、就農を学びたい人を受け入れています。今年度には3人が参加しており、年齢層は20代から50代まで幅広いです。医療従事者や飲食店経営者など、これまでの経験や業種もさまざま。その背景には「自分で育てた農作物を食べたい」という強い思いがあります。都市部で農業を実際に体験できる場は限られている中、鳥飼八町は都市部に近くアクセスが良いため、学ぶには適した環境なんですよ。 
※Small Farmers College(スモールファーマーズカレッジ/略称SFC)は、週末だけで本格的な野菜栽培の技術と知識を基礎から体系的に学べる農学校

ー鳥飼八町という土地で農業を営む中で、地域が抱える課題や問題についてどのように感じていますか


鳥飼八町も、他の地域と同様に高齢化や後継ぎ問題といった課題を抱えています。周囲には兼業農家が多く、専業農家として生計を立てるためには、米作りの場合だと約20万平方メートルほどの田んぼが必要になります。それだけ広大な土地での米作りは現実的に厳しく、農業で食べていくことは難しいのです。

私のところに学びに来る若者たちには、農業を取り巻く厳しい現実をしっかりと伝えるようにしています。特に、農業をゼロから始める場合、機材などの初期投資に約2千万円ほどかかるため、まずは兼業農家としてのスタートをおすすめしています。日本の農業全体が厳しい状況にあることを伝えるのも、ある意味では使命だと考えています。

また、鳥飼八町は市街化調整区域※であるため、農地として活用するしかない課題があります。一方でこのエリアは都市部に近いという大きなメリットもあるため、そうした利点を生かした取り組みを模索しています。その一環として、JA北大阪と共同で「WE米®」という商品を手がけています。このWE米®は腸内環境の改善が期待できる商品です。市内の小中学校の給食用パンにも活用されており、子どもたちからも「おいしい!」という声が多く寄せられているのが非常にうれしいです。こうした取り組みを通じて地域とのつながりをさらに深めていきたいと思っています。

※市街化調整区域とは、無秩序な市街化を抑制し、農地や緑地を保全するため、開発が制限される区域

鳥飼八町の田園風景

 

地産地消の持つ力 100%摂津産に

ー今後の夢や展望について伺います。農業を通じて実現したい夢やビジョンがあれば教えてください。


私の夢は、摂津市で100パーセントの地産地消を実現することです。少なくとも、自分が食べるものは自分で農作物を育てて作れるような環境を目指したいと考えています。

都市部に住んでいても、私と同じように地産地消を実現しようという考えを持つ人々が増えているのを実感しています。特に、ウクライナ情勢や令和の米騒動といった出来事をきっかけに、日本の食料問題について考える機会が増えたのではないでしょうか。そうした流れもあり、私自身、地産地消に対する思いをさらに強く抱くようになりました。

いつか米の有機栽培を成功させたいです。一度挑戦したことがありますが、結果は散々でしたね。しかし、それ以降経験を重ねてきましたので、あきらめずに、化学肥料を使わない循環型の肥料で栽培する方法を探っていきたいです。

鳥飼東小学校の児童が植え付けた白菜
渡邊さんとシャッターアート
母屋を改装してデイサービスとして利用
春にはレンゲ畑がひろがる

 

農福連携、農業と福祉がつながる

ー障害者や高齢者が農業分野で活躍できる社会参加や自立を支援する「農福連携」にも取り組まれていますよね。その活動の背景や成果についてお聞かせください。


はい、複数の就労継続支援B型事業所と連携して活動しています。実際に日光の下で体を動かす農業は、さまざまな良い影響を与えてくれるようです。ここに来る方々の中には、コミュニケーションを取るのが少し苦手な方もいらっしゃいます。それでも、農業のような『ものづくり』の作業をしていると、自然と会話が生まれます。みんなで同じ作業に取り組むことが、会話をするきっかけや流れを作り、変に気負わずに交流ができるのでしょうね。

隣にあるデイサービスの利用者さんたちも畑仕事を楽しんでいらっしゃいます。作物が少しずつ成長していく様子がいいんでしょうね。農業という活動が、障害者や高齢者にとって、心身の健康維持にもつながっていることを実感しています。

ー米の収穫後の畑では、これからレンゲの花が咲き誇るということですが、この土地ならではの魅力や風景についても伺いたいです。


はい、米の収穫が終わった後には、レンゲの種を蒔いています。そして春になると、畑一面にレンゲの花が咲き誇り、まさに『映えスポット』に。ぜひ多くの方々に見に来ていただけたらと思っています。レンゲの花を活用する養蜂も予定しています。実は以前、レンゲ蜂蜜が品評会で4位を受賞したほどの高品質だったんですよ。

咲き終わった後のレンゲは次の農作物の肥料として活用されます。レンゲは自然に土へと還り、次のシーズンの米を育てるための栄養を土壌に与えてくれます。私が目指す『循環型の農業』の形です。

稲刈りをする渡邊さん
収穫前の稲

 

農業で叶える 鳥飼八町の未来

ー最後に、農業を通じてどのような可能性を見出そうとされているのか、お考えをお聞かせください。


新事業として『お野菜配送便』を始めます。市内で収穫した新鮮な野菜を地元の飲食店に直接配送することで、地産地消の取り組みを広げたいのです。この仕組みに賛同していただける飲食店の皆さんにお声がけをしながら、地域全体で農産物の価値を共有できる環境を築きたいと考えています。

また、鳥飼八町1丁目では、WE米®をはじめとする地元の米や鳥飼なすなどの農作物を積極的に栽培しています。一方で、鳥飼八町2丁目では市民農園を中心としたさまざまな人が集える場所を構想中です。この土地を有効活用し、地域の人々の交流や農業体験を通じて、農業の持つ社会的な価値を広げる場を作りたいと思っています。

これまでの農業にとどまらず、新たな農業の形を模索し続けることで、地域や社会全体にとって新しい価値を提供していきたいと考えています。

デイサービスの利用者が畑仕事を楽しんでいる
摂津市の誇る伝統野菜「鳥飼なす」
&わたし