オルガンを弾きながら、譜面を読み解く

更新日:2022年12月06日

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オルガニストの冨田一樹さん。2016年、ドイツのライプツィヒ第20回バッハ国際コンクールのオルガン部門にて日本人初の第1位と聴衆賞を受賞されました。バッハをこよなく愛する演奏家として、パイプオルガンの演奏により、バロック音楽の魅力、パイプオルガンの魅力を伝える活動をされています。

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冨田 一樹さん

摂津市在住。中学生の時に摂津市へ転入。大阪音楽大学を首席で卒業。ドイツにあるリューベック音楽大学大学院に入学し、パイプオルガンを専攻。大学在籍中に、第20回バッハ国際コンクールオルガン部門に出場し、日本人として初めて優勝する。その後、同大学の修士課程を最高得点で修了。現在は日本各地でコンサートを行い、パイプオルガンや古い音楽の魅力を発信している。

 

音楽をつくりたい

ーパイプオルガンを弾き始めたきっかけは何ですか


もともと母がクラシック好きで、幼い頃からクラシック音楽をよく聴いていました。小学4年生の時に、自然と音楽をつくる側になりたいと思い、母に相談すると、「音楽をつくりたいなら、楽器を演奏できなければいけないのでは?」と言われ、ピアノを習い始めました。

その後、ふとバッハのCDを聴く機会があり、そこに収録されていたパイプオルガンの曲が、今まで聴いたことの無い壮大なサウンドであることに感銘を受け、自分もパイプオルガンを弾きたいと思うように。宝塚市にあるベガホールのパイプオルガンを試し弾きできる機会があり、初めて中学3年生の時に自分の手で演奏しました。鍵盤の重み、しっかり且つきらびやかに響く音がとても印象深く、輝かしさと重みの両方を兼ね備えるパイプオルガンに魅せられましたね。

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ー演奏するときに意識していることはありますか?


ピアノのように、鍵盤を押す強さによって音の「強弱」を表す打弦楽器とは異なり、パイプオルガンは、音の「長さ」に違いをつけ、それらを組み合わせることで音の表情を作り出す楽器です。つまり、曲の構造を理解し、それに合わせてどのような弾き方が美しいハーモニーを奏でることができるのかを読み解きながら弾くことを意識しています。

 

300年前の演奏を再現

ーバッハ国際コンクールになぜ出場しようと思ったのですか


ドイツのリューベック音楽大学の先生に、バッハ国際コンクールという大会があるが、出場してみないか、と勧めていただきました。私がバッハ好きであり、バッハをはじめとする古い音楽に対する演奏解釈が求められる大会であることに魅力を感じ、挑戦してみようと思いました。

冨田さん賞状2枚画像
冨田さんパイプオルガン

ーコンクールはどんな様子でしたか?


2016年7月、ドイツのライプツィヒというきれいなところでコンクールが行われました。

コンクールは全部で4つのラウンドであり、全体で10日間もありました。課題曲はバッハ曲だけではなく、膨大なプログラムを準備しなければならず、難しい曲ばかりでとてもしんどかったですね。

印象に残っているのは、第2ラウンドです。2時間の練習ののち、本番が明後日というスケジュールで、練習から本番までの長い時間は非常にストレスでした。

バッハ国際コンクールはかっこよく弾くことではなく、バッハが生きていた約300年前の楽器の弾き方としてふさわしいかどうか、が重要視されるコンクールです。もちろん、当時の演奏を聞くことはできませんが、「音色」、「鍵盤の幅」、「高さ」、「足鍵盤の幅」などラウンド毎に全然違う楽器を使って、「当時の古い楽器で表現すると、こういう演奏だろう」とイメージしながら弾きます。古い音楽に対する演奏解釈に説得力のある演奏だと評価が高くなります。

私はこの点を評価してもらえたのだと思います。

冨田さんパイプオルガン演奏画像

 

隠れた名曲を広めたい

ー将来どんなことをしたいですか?


バッハをこよなく愛する演奏家として、皆さんに音楽を提供していきたいです。また、パイプオルガンの曲は、バッハの音楽以外やバロック時代の音楽以外にも、隠れた名曲が沢山あります。このような曲をコンサートで紹介しながら、広めていきたいです。皆さんがパイプオルガンを知るきっかけをつくることができたら嬉しいですね。

あと、私がお金持ちになったらの話ですが、自分の「パイプオルガン」と「空間」のセットを所有したいですね。ヨーロッパの石造りの教会でパイプオルガンを弾くと、潤沢な響きがします。それだけでも日本では味わえない空間です。小さくても良いので、古い音楽が弾ける環境を作ってみたいと思います。

ー2018年に本市のPR動画「いいとこ いいこと せっつ」のBGMの作曲をしてくださいました。どのようなイメージで作曲されましたか


映像を見たとき、企業や風景などジャンルを問わず様々な場面があり、どんな場面でも合うような曲にしたいと思いました。高い所から街を撮るような映像があったので、摂津市を俯瞰しながら見守っているような神々しい感じのイメージで作曲しました。大きく分けて3つの場面で構成しています。真ん中は工場系の場面にするなど、少し機械チックに寄せた音源にしました。

演奏だけではなく、作曲も志望していたので、摂津市とこういう形でコラボできたのは楽しかったですね。

摂津市PR動画「いいとこ いいこと せっつ」はこちら

冨田さんお話されている様子

 

 

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