アートでつながる、笑顔広がる

更新日:2022年04月18日

高雄良子

 

「みんなちがって、みんないい。」ゆびまるこ代表の高雄良子さん。アートを通じた居場所づくりやイベントなど、大人も子どもも自己肯定感を育てる幅広い活動をされています。

 

高雄さん取材

高雄 良子さん

摂津市在住。市で生まれ育ち、仕事や子育て、家事の両立で疲弊している時に、パステルアートに出会う。自己肯定感が高まり、驚くほど心が回復。自身の体験から、他のお母さんにも居場所を作りたいとパステルアート活動を始める。普及を目指し、2015年摂津市で「ゆびまるこ」を発足。2018年には国連水機関・世界水の日こども議会アンバサダーに任命される。2019年には「ゆびまるこ」の受講者10,000人を達成(10000スマイルプロジェクト)。現在は市のつどい場事業の運営や地域アートキャラバンの開催など多岐に渡り活動されている。

 

たった1回のくるくるで人生が変わる

ーパステルアートに出会ったきっかけは何ですか?


当時、家庭裁判所に勤めていたのですが、子育て、仕事、家事の3重苦で、自分に余裕がありませんでした。小学生だった息子には、他の子どもと比べていつも怒ってしまって、「お母さんがタタリ神になった。」と言われてしまいました。

どんどん自己嫌悪にも陥り、カウンセリングにも通いましたが、長い間改善しませんでした。そんなとき、たまたま参加したイベントで、パステルアートに出会いました。指でくるくると描いた、たった一度の体験。絵が描けたことがうれしくて、泣くほどの衝撃を受けました。

それからパステルアートを続けていくことで、気持ちが解放され、カウンセリングの先生からも「何があったの!?」と驚かれるぐらい。息子のことも他の子と比べなくなって、面白い子だなと思えるようになり、子どもからもお母さん楽しそう。と言われ、二人で一緒にいる時間も増えましたね。

 

ー「ゆびまるこ」をはじめた理由は何ですか?


パステルアートで自身が救われたので、「他の苦しんでいるお母さん達を支えたい」「もっと普及させたい」という思いがあったのですが、仕事の傍らアート活動をしていました。

そんな中、東日本大震災発生時に職場にいたのですが、揺れがおさまると、急に「私辞めます」と声が出ていました。いつかはやりたいなと思っていましたが、「いつかはない。」と感じ、仕事をやめ、本格的に普及活動を開始しました。アートとしては、色々なジャンルのパステルアートがあったのですが、パステルにはそれだけではない、人の心に響く何かがある。小児科の親子広場等でお母さんたちに週に1度、体験してもらうと、効果が出て、みんな悩みが軽くなっていきました。お母さんの一人の時間にもなって、ほっとできる場所に。本格的に臨床心理士等の先生とともに、パステルアートの実証や研究を重ね、学会などでも発表しました。

学会では「一般的なパステルアートではない。心が育つもの。ただのアートではない。」と高く評価していただけ、そこから興味をいただく機会が増え、地元摂津でのサークル活動、各地でのイベント参加などを経て、出身地である摂津市で「ゆびまるこ」を発足しました。

 

ゆびまるこ

 

いくつになっても夢を持てる居場所

ー市の介護予防事業「つどい場」の運営に携わったきっかけは?


元々子育て世代の方に向け、活動してきたのですが、ご高齢の方はケガや病気も多く、身内の不幸など、レジリエンス(心の自己回復力)が必要な世代ではないかと考えるようになりました。

私自身が摂津で生まれ育ち、小学生の時に旗を持って通学路を見守ってくれた皆さんに恩返しがしたい。子どもたちにとっての公園みたいにご高齢の方が、フラッと来られる場所があれば良いなと思いました。ゆびまるこのメンバーにも、この考えを話すと共感してくれる方もいて、市のつどい場に応募しました。

ここに来たら、みんながいるから、一人じゃないと思える。「おはよう。」「またね」が言える場所。些細なことでも話せる場所です。参加者は、当初、茶色系の服を着た人が多いのですが、みんな明るくきれいになっていきます。アートで色に触れることもあってか、どんどん明るい色の洋服を着だして、いきいきして、きれいになっていきますね。

最初は鶴野地域だけだったのですが、運営スタッフからも私の地域に欲しい。と別府や鳥飼でも運用するようになりました。

 

つどい場
つどい場集合写真

 

ー子どもたちに教えるときは、どんな工夫をしていますか?


子どもたちのアート教室では、自由に安心して、表現させてあげたい。

例えば、大人の考える海と子どもたちの考える海は違う。子どもが〇で海を表現したときに、「違うよ。海は広くて、そんな狭いものじゃないよ」と正しさや真実を求めて指摘するものではないと思っています。子どもの発達によって見えている海が、アートである。それを大人が喜んで褒めてあげれば、自己肯定感に繋がり、親への信頼感が高くなります。保護者の皆さんにも考え方を伝え、ご理解いただくことで、より、子どもの心の安定にもつながり、子どもたちの言葉がどんどん育っていきます。

私自身、芸大も出ていないし、自分が絵を描けない人間だった。自信がなかった。だから、心から「できるよ!」って言えますね。

 

 

皆で子どもたちの未来を創りたい

ー最近はどんな取り組みをされていますか?


市の市民公益活動として、令和2年度に、アートで繋がれる場所を増やしたく、運営に携わっていただける人と出会いたいと思い、アートサポーターを始めました。そこで出会った人たちが、実際に活動できるよう、実践力をつけたいと思い、令和3年度はアートキャラバンを1年間開催。コロナ禍で失われた体験を届けたいと考え、たくさんの「メンバー」と協議し、摂津市内の様々な地域でアートイベントを開催しました。

今後は、アートキャラバンで出会った人たちと一緒に、新たなプロジェクトとして、「みんなで描こう♪がんばれ!せっつ!なんでも!ぬりえプロジェクト」を実施する予定です。地域の人たちと協力して、地域の魅力発掘を行い、ぬりえを作成。それを子どもたちが家で塗って、「この地域には、こんな場所があるんだ。」と家族の会話を増やし、皆の愛着を育てるプロジェクトにしていきたいと考えています。せっつぬりえを通じて、皆で子どもたちの未来をつくりたいですね。

 

ー今後の夢はありますか?


将来的には「ゆびまるこハウス」を作りたいですね。朝はママが子どもたちを連れてきて、昼は講座をしたり、3時ぐらいには子どもたちにおじいちゃんおばあちゃんが、宿題をみてくれたり。仕事が終わったお母さんたちが迎えに来る。アートで繋がった人たちが、地域で運営する居場所を作りたいですね。

他にも、香港やシンガポールなど、海外の人とオンライン講座をすることもあり、それがもっと広がって、世界中の子どもたちに広げたい。

日本だけでなく、世界中で「みんなまる」という考えの人を増やしたい。「楽しいね。」「うれしいね。」と感じる機会をたくさん作り、みんなを元気に笑顔にすること。「みんなちがって、みんないい」と笑いあえる世界をつくること。それが私の夢です。

 

 

&わたし