○摂津市子どもを虐待から守る条例
令和6年3月28日
条例第3号
令和3年8月に、本市で3歳男児が虐待により亡くなるという痛ましい事案が起こりました。
本市では、虐待への組織的な対応が十分に取れていなかったことを深く反省し、二度と同じような事案を起こさないよう、起こさせないように、体制の強化や関係機関等との連携強化、また、児童虐待対応の専門家を招へいし、職員のリスク認識の向上等に取り組んできました。
虐待は、子どもを恐怖に陥れるだけでなく、心身の健やかな成長を妨げ、人格の形成に重大な悪影響を与えるとともに、人としての尊厳を傷つけ、将来にわたって苦しめ、時として子どもの命をも奪ってしまう重大な人権侵害行為であります。
いかなる理由があっても、虐待は決して許されるものではありません。
虐待を未然に防ぐためには、保護者が抱える子育てに関する悩みや不安を解消することができるように、また、地域社会から孤立することがないように、地域全体で子育て家庭を支えていくことが重要となります。
そして、未来を担う子どもを虐待から守ることは、地域社会の責務と捉え、市、保護者、関係機関等及び市民等がそれぞれの役割と責任を自覚し、一体となって子どもを虐待から守る取組を推進することで、虐待のない地域社会を実現するために、この条例を制定します。
(目的)
第1条 この条例は、子どもを虐待から守ることに関し、基本理念を定め、市、保護者、関係機関等及び市民等の責務を明らかにするとともに、子どもを虐待から守るための施策の基本となる事項を定めることにより、当該施策を総合的に推進し、虐待のない地域社会の実現を図り、もって子どもの心身の健やかな成長及び発達に寄与することを目的とする。
(1) 子ども 児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号。以下「法」という。)第2条に規定する児童をいう。
(2) 保護者 法第2条に規定する保護者をいう。
(3) 虐待 法第2条各号に掲げる行為をいう。
(4) 関係機関等 学校、幼稚園、保育所、認定こども園、医療機関その他子どもの福祉に業務上関係のある団体及び子どもの福祉に職務上関係のある者をいう。
(5) 市民等 市内に居住する者、市内において就業する者並びに市内で事業活動を行う個人、企業及び団体をいう。
(6) 通告受理機関 市及び児童相談所をいう。
(基本理念)
第3条 虐待は、子どもの心身の成長及び人格の形成に重大な悪影響を与え、将来にわたって子どもを苦しめ、ひいては子どもを死に至らしめるおそれがある重大な人権侵害行為であるため、何人もこれを行ってはならない。
2 子どもを虐待から守るに当たっては、虐待の未然防止、早期発見及び早期対応に努め、子どもの安全の確保を最優先とし、子どもの意見を尊重しつつ、最善の利益を考慮しなければならない。
3 子育て家庭が地域社会から孤立することなく、安心して子育てができる環境づくりが重要であることから、市、関係機関等及び市民等が一体となって子育て家庭を支えなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、虐待の対応に当たっては、児童相談所及び関係機関等と連携し、虐待を受けた子どもの安全を確保し、生命を守ることを最も優先しなければならない。
2 市は、前条の基本理念にのっとり、子どもを虐待から守るための総合的な施策を策定し、これを実施しなければならない。
3 市は、前項の施策の実施に当たっては、関係機関等及び市民等と連携して取り組むものとする。
4 市は、関係機関等及び市民等が実施する子どもを虐待から守ることに関する取組について必要な支援を行うよう努めるものとする。
(保護者の責務)
第5条 保護者は、子どもの養育に係る第一義的責任を負っていることを踏まえ、虐待が子どもに与える重大な悪影響を認識し、子どもの健全な成長を図るよう努めなければならない。
2 保護者(保護者と同居する者、保護者と交際する者その他の保護者の子どもの養育に一定の関与がある者を含む。以下この条及び第13条第1項において同じ。)は、体罰その他の子どもの尊厳を傷つける全ての行為を行ってはならない。
3 保護者は、通告受理機関が行う子どもの安全の確認を行うための措置に協力しなければならない。
4 保護者は、子育てに関して、市、児童相談所又は関係機関等による指導、助言その他の支援を受けた場合は、必要な改善等を行うものとする。
(関係機関等の責務)
第6条 関係機関等は、虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、虐待の未然防止及び早期発見に努めなければならない。
2 関係機関等は、それぞれの専門性及び特性を生かし、市及び他の関係機関等と相互に連携し、子どもを虐待から守るための取組を行うよう努めなければならない。
3 関係機関等は、通告受理機関が行う子どもの安全の確認及び安全の確保に協力するよう努めなければならない。
4 関係機関等は、市が実施する子どもを虐待から守るための施策に協力するよう努めなければならない。
(市民等の責務)
第7条 市民等は、市及び関係機関等とともに子育て家庭を支える主体として、子どもを虐待から守ることに関する理解を深め、虐待の防止に努めなければならない。
2 市民等は、子育て家庭が地域社会から孤立することのないように、地域において子ども及び保護者を見守るよう努め、かつ、これらの者との関わりを深めるよう努めるものとする。
3 市民等は、通告受理機関が行う子どもの安全の確認及び安全の確保に協力するよう努めるものとする。
4 市民等は、市が実施する子どもを虐待から守るための施策に協力するよう努めるものとする。
(妊娠期からの支援等)
第8条 市は、虐待の未然防止のため、妊娠期から養育環境等に留意し、支援の必要な家庭に対しては、関係機関等と連携し、妊婦の不安解消のための支援、産後の子育てを円滑に行うための支援等、必要な施策を講ずるものとする。
2 妊婦の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)及び同居者は、当該妊婦の身体的及び精神的な負担を軽減し、当該妊婦が安心して生活ができるための配慮に努めなければならない。
(未然防止)
第9条 市は、虐待の未然防止のため、良好な親子関係が築けるよう子どもの発達に応じた子どもとの関わり方等について、保護者及び関係機関等に情報提供を行うものとする。
2 市は、虐待の未然防止のため、保護者に対し、子育てに関する専門的な知識及び技術の提供等、必要な支援を行うものとする。
3 市は、虐待の未然防止のため、子育てに関する悩み、不安等がある保護者が市、児童相談所及び関係機関等へ相談し、並びに子育て支援に係る事業を利用することを促進するために必要な取組を行うものとする。
(早期発見)
第10条 市、関係機関等及び市民等は、子どもの安全な暮らし及び健やかな成長のために、虐待の早期発見に努めなければならない。
2 虐待を受けたと思われる子どもを発見した者は、速やかに、法第6条第1項の規定による通告(以下「通告」という。)をしなければならない。
3 市は、関係機関等及び市民等に対し、通告をする義務があることを周知するとともに、虐待を受けたと思われる子どもを発見した者が通告しやすく、かつ、虐待を受けた子どもが自ら相談しやすい環境を整備しなければならない。
(通告及び相談に係る対応等)
第11条 市は、通告があった場合は、調査及び子どもの安全の確認を行い、必要があると認めるときは、子どもの安全の確保を行わなければならない。虐待に係る相談があった場合及び他の市町村(特別区を含む。)又は児童相談所から虐待に係る引継ぎを受けた場合も、同様とする。
2 市は、通告及び虐待に係る相談に迅速な対応をすることができる体制を整備するものとする。
3 市は、通告及び虐待に係る相談をした者が特定されないよう必要な措置を講じなければならない。
(虐待を受けた子どもへの支援)
第12条 市は、関係機関等と連携し、虐待を受けた子どもが再び虐待を受けることなく、家庭において適切に養育されるよう必要な支援を行わなければならない。
2 市は、関係機関等と連携し、虐待を受けた子どもの置かれている環境等を十分考慮し、必要に応じて、子どもの心身の健康の回復を図ることができるよう、適切な支援を行うものとする。
(虐待を行った保護者に対する指導及び支援)
第13条 市は、関係機関等と連携し、虐待を行った保護者に対し、虐待の再発防止に関して必要な指導を行わなければならない。
2 市は、関係機関等と連携し、虐待を行った保護者に対し、必要に応じて、虐待を受けた子どもとの良好な関係を構築するための支援及び保護者の心身の回復に資する支援を実施するものとする。
(児童虐待防止推進月間)
第14条 子どもを虐待から守ることについて市民等及び関係機関等の関心と理解を深めるため、児童虐待防止推進月間を設ける。
2 児童虐待防止推進月間は、毎年11月とする。
3 市は、児童虐待防止推進月間において、関係機関等と連携し、その趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めなければならない。
(要保護児童対策地域協議会)
第15条 市は、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第25条の2第2項に規定する支援対象児童等の早期発見及び支援を実施するため、同条第1項に規定する要保護児童対策地域協議会(以下「協議会」という。)を構成する機関相互の連携を深め、定期的に会議を実施する等、協議会の適切かつ円滑な運営を図るものとする。
2 市は、協議会を構成する機関の意識及び資質の向上に資するため、定期的に研修等を実施するものとする。
(財政上の措置)
第16条 市は、子どもを虐待から守るための施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるものとする。
(委任)
第17条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。
附則
この条例は、令和6年4月1日から施行する。